眠りに落ちるとき、ショーホフは満足しきっていた。
今日は、いろんなことがうまくいった。
営倉には入れられなかったし、一〇四班は「社会主義生活本部」へやられなかったし、昼めしの雑炊を一杯チョロまかしたし、班長は有利なノルマ査定を決めてきたし、ショーホフの煉瓦積みは快調だったし、鋸のかけらは身体検査のとき見つからなかったし、晩方シーザーのおこぼれにあずかったし、タバコは買ったし。
それと、病気はどうやら直ったようだし。
一日が過ぎ去った。
どこといって陰気なところのない、ほとんど倖せな一日が。
アレクサンドル・ソルジェニツィン「イワン・デニソビッチの一日」(小笠原豊樹訳 河出書房新社)